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| 12 すべてを含んだ「黒」 |
★不吉、死、暗黒、抑圧、そして「腹黒い」という言いまわし。悪とか忌まわしいものを表現する場合、私たちは決まって黒という色を使います。明暗をあらわす白と黒。この2色は美の極致ともいわれる色であり、人の心理を的確に示す色でもあります。自己否定の強い状態の時に描いた絵は、ほとんどが黒といっても過言ではないかもしれません。黒い色しか目に入らない…。まさに黒い心理状態といえるのでしょう。★3年ほど前のことですが、「黒い色」で、とても印象深い出来事がありました。ある企業の若手社員研修の時に、色を使ったゲーム感覚の心理テストをしました。男女30人がいっせいに描き始めたなかで、たったひとり、腕組みをしてじっとしている青年がいたのです。同席していた課長のうながしにも耳をかさず、全く動かないのです。いつもは明るい彼のそんな行動に仲間たちもとまどいながらも、描き終えた者同士で、ワイワイと批評しあっていました。すると突然、腕組みをしていた彼が画用紙に大きな長方形を書いたと思いきや、ものすごい音をたてながら、黒色のクレヨンで長方形の内側を塗りこんでいったのです。 ★あ然とする周囲のみんなに目を上げることもなく、ひたすら黒のクレヨンを動かしつづけ、「人はなぜ怒らなければいけないのか」「怒りたくない!」と大きな声を出し始めたのです。最初はどうしたんだといぶかしげに見ていた仲間たちも、彼のとてつもなく正直なその姿に対して、塗り終えるまで待とう、という態度に変化していきました。 |
| 多くを語る色 |
★塗り込むことで感情を吐き出しているかのようなその行動を、驚きと、せつない思いで見守ったという感じを思い出します。「すっきりしました」、というその後の彼の後日談には、救われた思いがしたものです。★「黒」は沈黙の色や包み隠してくれる色というだけの色ではなく、かえって多くを語ってしまう場合もあるのです。たくさんの色を混ぜ合わせると「黒」になるように、私たちの気持ちも複雑になればなるほど「黒」の状態に近づいていくのではないでしょうか? |
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